大家や管理会社から突然「来月から家賃を上げます」と通知されると、応じなければ退去させられるのではないかと不安になります。しかし、通知された金額が、そのまま自動的に新しい家賃として確定するわけではありません。
一方で、納得できないからと家賃の支払いを止めるのも危険です。この記事では、値上げ通知を受けた日に確認すること、貸主への返答、話し合いがまとまらない場合の相談先までを順番に整理します。
今日やること:すぐ同意せず、支払いは止めない
家賃値上げの通知を受けたら、次の2点を同時に守ることが重要です。
- その場で同意書へ署名せず、値上げの根拠を確認する
- 争いがあっても、相当と考える家賃の支払いを続ける
国土交通省の相談事例集でも、更新時に値上げを告げられた場合、提示額に直ちに拘束されるわけではなく、まず協議し、まとまらなければ調停や訴訟で適正な賃料を決める流れが案内されています。
家賃を上げられる理由
借地借家法では、土地や建物にかかる税負担の増減、土地・建物価格や経済事情の変動、近隣の同種物件との比較などにより、現在の家賃が不相当になった場合に、貸主・借主のどちらからも賃料の増減を求められる仕組みがあります。
ただし、「物価が上がった」「周辺より安い」と言われただけで、希望額が当然に認められるわけではありません。値上げ幅が妥当かは、契約内容、建物の状態、立地、築年数、設備、周辺相場などを含めて検討されます。
今日確認する6つのこと
1.賃貸借契約書
契約期間、更新日、家賃改定に関する条項、定期借家か普通借家かを確認します。「更新時に協議する」と書かれている場合でも、貸主が提示した金額へ無条件で同意するという意味とは限りません。
2.通知した人と連絡先
大家、管理会社、サブリース会社など、誰が値上げを求めているかを確認します。不審なメールやSMSだけで通知された場合は、契約書に記載された正式な連絡先へ確認してください。
3.現在額・値上げ後額・開始日
月額でいくら増えるのか、管理費や共益費も変わるのか、いつから求められているのかを書き出します。更新料や保証料の変更を家賃値上げと混同しないよう、内訳を分けます。
4.値上げの具体的な根拠
固定資産税、修繕費、保険料、周辺相場など、何を根拠に、どのように金額を計算したのかを書面で求めます。「最近は何でも高いから」だけでは比較ができません。
5.近隣の同条件物件
同じ駅、広さ、築年数、設備、階数などが近い募集物件を確認します。ただし、募集家賃は実際の成約家賃と同じとは限らないため、参考資料として扱います。
6.建物や設備の状態
雨漏り、給湯器、エアコン、共用部分などに未修繕の問題がある場合は、写真、修理依頼メール、対応履歴をまとめます。値上げ協議とは別に、修繕が必要な事項として整理してください。
貸主への返答例
家賃改定のご連絡を受け取りました。検討のため、値上げ額の算定根拠、周辺相場との比較資料、適用開始日を書面でお知らせください。確認と協議が終わるまでは、従来どおりの家賃を期日までに支払います。
感情的に拒否するのではなく、資料を求め、協議の意思があることを残します。メール、書面、郵便の記録は保存してください。
値上げに納得できない間の家賃
争いが続いていても、借主は相当と認める額を支払う必要があります。全額を止めると、家賃滞納として契約解除や明渡し請求の問題につながるおそれがあります。
貸主が従来額を受け取らない場合は、支払いの申出をした記録を残し、法務局の弁済供託を検討します。家賃値上げを求められただけで直ちに供託できるとは限らず、原則として実際に支払いを申し出て受領を拒まれた事実が重要です。手続前に法務局へ確認してください。
後に賃料の増額を正当とする裁判が確定し、その額が従来の支払額より高かった場合は、借地借家法32条2項により、不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付けて支払う必要があります。長期化しそうなときは、不足額と利息に備えて差額を別口座へ積み立てておくと安全です。
話し合いで決める方法
- 貸主の根拠資料を確認する
- 周辺相場や建物状態を示して希望額を伝える
- 段階的な値上げ、開始時期の延期、設備修繕との組合せなどを提案する
- 合意内容を口約束にせず書面にする
合意書には、新しい家賃、開始月、管理費、契約期間、その他の条件を明記します。保証会社を利用している場合は、家賃変更の届出が必要かも確認します。
まとまらないときの相談先
- 自治体の住宅相談窓口
- 消費生活センター・消費者ホットライン188
- 法テラスや弁護士会の法律相談
- 簡易裁判所の賃料増減額調停
- 家賃を受け取ってもらえない場合の法務局・供託所
賃料増減額の争いは、訴訟の前に調停を行う仕組みがあります。契約書、値上げ通知、支払記録、やり取り、周辺相場資料を準備すると相談が進みやすくなります。
やってはいけないこと
- 内容を読まずに同意書へ署名する
- 納得できないという理由だけで家賃を全く払わない
- 電話だけで話し、記録を残さない
- 受領拒否の確認をせず、自己判断だけで供託する
- 「応じなければ即退去」と言われて、その日のうちに退去届を出す
まとめ
家賃の値上げ通知を受けても、提示額が自動的に確定するわけではありません。契約書と根拠資料を確認し、書面で協議してください。
ただし、争っている間も支払いを止めないことが重要です。貸主が受け取らない場合は供託を含めて法務局へ相談し、話し合いで解決しなければ住宅相談、法テラス、簡易裁判所の調停を利用します。
公式情報
公式情報確認日:2026年8月8日
次回確認予定:2026年10月1日
家賃額、相談窓口、供託所、裁判所の手続は地域や契約内容で異なります。