「養育費が約束どおり振り込まれない」「相手が転職し、勤務先が分からない」「口約束しかしていない」「離婚時に何も決めなかった」。養育費の不払いが始まったときは、相手への連絡だけで解決しようとせず、取り決めの種類と離婚した時期を確認することが重要です。
今日最初にすること:離婚協議書、公正証書、調停調書、審判書、判決書、振込履歴、未払い月の一覧を集め、養育費・親子交流相談支援センター、自治体のひとり親相談窓口、法テラスのいずれかへ相談してください。
DVや脅迫がある場合は直接連絡しない
相手から暴力、脅迫、執拗な連絡、居場所を探す行為などを受ける危険がある場合は、自分で督促する前に、配偶者暴力相談支援センター、警察、自治体の女性相談窓口、弁護士へ相談してください。養育費の請求よりも、本人と子どもの安全確保を優先します。
まず確認する4つの分岐
1.調停調書・審判書・判決書がある
家庭裁判所の調停や審判、判決などで養育費が決まっている場合は、支払いを求める根拠となる書類があります。裁判所の履行勧告を利用できる場合があり、支払いがなければ給与や預金の差押えを検討します。履行勧告だけで強制的に回収できるわけではないため、解決しない場合は強制執行の相談へ進みます。
2.強制執行認諾文言のある公正証書がある
養育費の金額や支払日だけでなく、滞納時に直ちに強制執行を受けても異議がない旨の「強制執行認諾文言」が入った公正証書であれば、改めて家庭裁判所の調停や審判を経ずに、強制執行を申し立てられる場合があります。公正証書があるだけで自動的に入金されるわけではないため、正本や送達証明書など必要書類を公証役場や裁判所へ確認します。
3.合意書や離婚協議書はあるが、公正証書ではない
書面による合意は重要な証拠になります。2026年4月1日以降は、父母間の合意などで取り決めた養育費(裁判所では「形成養育費」と案内されています)について、債務名義がない場合でも、先取特権に基づく担保権実行を検討できる場合があります。ただし、合意の成立、養育費の内容、未払い額を示す書類などが必要で、書面があれば必ず差押えできるという意味ではありません。
2026年4月1日からは、父母の合意などで決めた養育費について、同日以降に発生した分のうち、子ども1人当たり月額8万円を上限として先取特権が認められる制度が始まりました。2026年3月31日以前に離婚した場合や、施行前に養育費を取り決めていた場合でも、2026年4月1日以降に発生する養育費には先取特権が付与され得ます。施行前に支払期日が来た分は、この新しい先取特権の対象ではありません。具体的に利用できるかは合意内容や証拠、対象月などで変わるため、裁判所または弁護士へ書類を見せて確認してください。
4.養育費を何も決めていない
話し合いができる場合は、金額、支払日、支払期間、振込先、進学や医療など特別費用の扱いを書面にします。話し合いが難しい場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停を申し立てます。
2026年4月1日以降に離婚し、養育費を取り決めないまま離婚した場合には、離婚時から引き続き子どもを主として監護している親が、暫定的に子ども1人当たり月額2万円の「法定養育費」を請求できる制度が始まりました。法定養育費は、父母が養育費を取り決めるまで、または子どもが18歳に達するまでの補充的な仕組みです。月額2万円が最終的な養育費の標準額という意味ではありません。
2026年4月から始まったワンストップ執行手続
養育費や婚姻費用の回収では、「相手の財産や勤務先が分からない」「情報を得た後に、別途差押えを申し立てる負担が大きい」という問題がありました。
2026年4月から、財産調査と、判明した給与への差押えを連続して行える「養育費等のワンストップ執行手続」が導入されています。手続には、相手本人に財産を陳述させる財産開示手続と、市区町村などの第三者から勤務先情報を取得する第三者からの情報取得手続があります。
第三者からの情報取得をワンストップで利用するには、原則として相手について3年以内に財産開示期日が実施されていることが要件です。差し押さえる財産をすでに把握しているか、離婚日が2026年4月1日より前か後か、債務名義があるかなどによって選ぶ手続が変わります。裁判所の手続選択フローを確認し、複雑な場合は弁護士へ相談してください。
養育費が振り込まれない日に保存するもの
- 養育費を決めた書類の原本と写し
- 入金先口座の通帳、取引履歴、ネットバンキング画面
- 何月分が未払いか分かる一覧表
- 相手とのメール、メッセージ、手紙
- 相手の住所、勤務先、金融機関など分かっている情報
- 自分と子どもの戸籍、住民票など
- 自分と相手の収入資料があればその写し
- これまで受け取った金額と日付の記録
電話で話す場合も、日時、相手の発言、支払うと述べた日をメモします。感情的なやり取りを繰り返すより、未払い額と根拠を一覧にして相談窓口へ見せる方が、次の手続につながりやすくなります。
相手への連絡文の例
「○年○月分の養育費○円について、○月○日時点で入金を確認できていません。取り決めでは毎月○日までの支払いとなっています。○月○日までに振込予定日をご連絡ください。今後の記録のため、回答は書面またはメッセージでお願いします」
相手との接触に危険がなく、連絡することが適切な場合に限って使います。支払いを求める際は、脅すような表現や、子どもとの交流を一方的に条件とする表現は避けます。
相談先
養育費・親子交流相談支援センター
養育費の取り決め、請求、確保などを電話やメールで相談できます。法的な個別判断が必要な場合は、法テラスなどの案内を受けることがあります。
自治体のひとり親家庭支援窓口
自治体によっては、養育費相談、公正証書作成費用の補助、弁護士相談、養育費保証契約の費用補助などを実施しています。制度名や対象者、所得要件、申請時期は地域で異なります。「市区町村名+養育費相談」「市区町村名+公正証書 補助」で確認してください。
家庭裁判所
養育費請求調停、増額・減額調停、履行勧告、強制執行に必要な手続などを確認します。裁判所は手続の案内を行いますが、どの方法を選ぶべきかという法律相談は弁護士などへ相談します。
法テラス・弁護士
相手が財産を隠している、勤務先が分からない、公正証書や合意書の効力が分からない、差押えを進めたい、DVがあるといった場合は法律相談を利用します。収入や資産などの条件を満たす場合、法テラスの無料法律相談や費用立替制度を利用できることがあります。
相手が「収入が減った」と言っている場合
失業や病気、収入減があっても、決められた養育費が自動的にゼロになるわけではありません。支払う側が金額を変えたい場合は、父母の合意や養育費減額調停などが必要になることがあります。受け取る側も、相手の説明だけで滞納分を放棄する書面へすぐ署名せず、子どもの生活と将来分を含めて相談してください。
今日やることチェックリスト
- DVや脅迫などの危険がないか確認する
- 養育費を決めた書類を探す
- 未払い月と金額を一覧にする
- 入金履歴と相手との連絡記録を保存する
- 離婚日が2026年4月1日より前か後か確認する
- 養育費・親子交流相談支援センターまたは自治体窓口へ相談する
- 公正証書や裁判所書類がある場合は、履行勧告・強制執行を確認する
- 相手の勤務先や財産が不明なら、ワンストップ執行手続を相談する
よく検索される疑問
養育費が払われない場合、まずどこに相談しますか?
養育費・親子交流相談支援センター、自治体のひとり親家庭支援窓口、法テラスが主な相談先です。調停調書や公正証書がある場合は、家庭裁判所や地方裁判所の手続案内も確認します。
養育費は何年前までさかのぼれますか?
取り決めの有無、請求した時期、個々の支払期日、時効の完成や更新などで異なります。「何年分」と一律には判断できません。未払いを放置せず、書類と入金履歴を持って早めに法律相談を受けてください。
相手の勤務先が分からなくても差押えできますか?
一定の条件を満たす場合、財産開示手続や第三者からの情報取得手続、2026年4月開始のワンストップ執行手続を利用できる可能性があります。持っている書類によって利用できる方法が変わります。
2026年から養育費は自動的に月2万円もらえますか?
自動入金される制度ではありません。2026年4月1日以降に養育費を決めずに離婚した場合の暫定的な請求権であり、必要に応じて請求や回収の手続が必要です。また、適正な養育費は収入や子どもの事情を踏まえて別途決めます。
関連するガイドとサイト内メニュー
当面の生活費や安全確保にも困っている場合は、次の案内も確認してください。
主な公式情報
- こども家庭庁「養育費・親子交流の相談を受けようとするひとり親の方へ」
- 法務省「父母の離婚後等の子の養育に関する民法等改正」
- 法務省「公正証書によって強制執行をするには」
- 裁判所「債権執行等(養育費等に基づく差押え)」
- 裁判所「養育費等のワンストップ執行手続(第三者からの情報取得)」
- 裁判所「養育費等のワンストップ執行手続(財産開示)」
- 養育費・親子交流相談支援センター
この記事は一般的な制度案内です。個別の請求額、時効、強制執行の可否は、書類と事実関係によって異なります。公式情報確認日:2026年7月25日