家族だけで様子を見続けないでください。同じ話を繰り返す、通帳をなくす、知らない契約をする。生活に影響が出ているなら、診断がつく前でも相談できます。親を責めるのではなく、地域包括支援センターへつなぎ、医療・介護・金銭管理を同時に確認してください。
今日最初にすること:親の住所を担当する地域包括支援センターへ電話してください。「診断はありませんが、生活とお金に支障が出ています」と伝えれば構いません。本人が受診を拒んでいても、家族だけで先に相談できます。
急な異変や危険があるなら、認知症相談を待たないでください
次のような状況では、通常の相談予約を待たずに対応してください。
- 急に言葉が出ない、片側の手足が動かない、意識がおかしい
- 行方が分からない、帰宅できない
- 火の消し忘れや運転で、本人や周囲に危険がある
- 詐欺や不審な契約で、今まさに送金しようとしている
- 食事や服薬ができず、生命や健康に危険がある
急に言葉が出ない、手足が動かない、意識がおかしいなら119番です。行方不明や差し迫った危険は110番へ連絡します。送金中なら金融機関へ止める相談をし、188や#9110にも連絡してください。認知症だと思い込んで、急病や詐欺を見逃さないでください。
認知症かもしれないと感じる主な変化
年齢による物忘れだけでなく、生活に支障が出ているかが重要です。たとえば、同じ質問を短時間に繰り返す、日付や場所が分からなくなる、支払いができなくなる、慣れた家事や仕事の手順が分からなくなる、性格や行動が大きく変わる、といった変化があります。
ただし、似た症状は薬の副作用、脱水、感染症、うつ、睡眠不足、甲状腺などの病気でも起こります。家族が「認知症だ」と決めつけず、医療機関で原因を確認する必要があります。
診断前でも、地域包括支援センターへ相談してください
地域包括支援センターは、高齢者の医療、介護、生活、権利をまとめて扱う窓口です。本人の同伴や認知症の診断書がないと電話できない窓口ではありません。親の住所を担当するセンターへ、家族だけでも相談を始めてください。
電話では、次のように伝えると状況を整理しやすくなります。
「親が同じ話を繰り返し、公共料金の支払いもできなくなっています。認知症かもしれません。本人は受診を嫌がっています。受診と生活、お金の管理について相談したいです」
センターでは、かかりつけ医やもの忘れ外来、認知症疾患医療センター、介護保険サービス、認知症初期集中支援チームなど、地域の支援につないでもらえる場合があります。名称や対応範囲は自治体によって異なります。
厚生労働省の2026年版ガイドでは、認知症は早期診断・早期対応が基本とされ、認知症疾患医療センターは2025年11月時点で全国514か所に設置されています。認知症初期集中支援チームは市区町村に配置され、本人宅を訪問して医療や介護につなぐ支援を行います。利用条件や訪問の可否は地域と本人の状況で異なるため、まず地域包括支援センターへ確認してください。
病院は何科へ行けばよいか
まずは、普段の健康状態や服薬を知っているかかりつけ医へ相談する方法があります。かかりつけ医がいない場合は、もの忘れ外来、認知症外来、神経内科、脳神経内科、老年内科、精神科などが候補になります。医療機関によって診療内容が異なるため、予約前に認知症の検査へ対応しているか確認してください。
本人が病院を嫌がるとき
本人に「認知症の検査へ行こう」と強く迫ると、拒否や不安が強くなることがあります。「血圧や薬を確認してもらおう」「最近眠れていないから相談しよう」など、本人が受け入れやすい目的から受診につなぐ方法もあります。
受診が難しいときは、地域包括支援センターへ、訪問相談や認知症初期集中支援チームの対象になるかを確認してください。家族だけで医師へ先に情報を伝えられるかは、医療機関へ相談します。
相談前に記録しておくこと
- いつ頃から、どのような変化が始まったか
- 同じ質問、迷子、支払い忘れ、火の不始末などの具体例
- 現在の病気、服薬、通院先
- 食事、睡眠、飲酒、転倒の状況
- 一人暮らしか、同居者や近隣の支援者がいるか
- 通帳、印鑑、カード、契約書の管理状況
- 介護保険の認定を受けているか
「最近おかしい」だけでなく、起きた出来事と日付をメモすると、医師や支援者が判断しやすくなります。
診断確定を待たず、介護保険の相談も進めてください
生活上の支援が必要なら、市区町村へ要介護・要支援認定を申請します。本人や家族のほか、地域包括支援センターなどが申請を支援できる場合があります。認定後は、訪問介護、デイサービス、福祉用具、短期入所などを組み合わせられます。
「認知症と確定していないから介護相談は早い」と考えないでください。転倒、服薬、食事、火の管理、金銭管理で困っているなら、その事実を伝えます。制度は診断名だけではなく、生活上どの程度の支援が必要かも見て判断されます。
家族でも、親の預金を勝手に移してはいけません
本人名義の預金と財産は、家族の共有財産ではありません。認知症が心配でも、同意なく通帳を取り上げ、自分の口座へ移してはいけません。後から使途不明金、相続争い、本人の権利侵害として問題になります。
支払いを手伝う場合は、本人の意思を確認し、領収書と出納記録を残し、生活費と家族自身のお金を混ぜないようにします。判断能力の低下が進んでいる場合は、地域包括支援センター、社会福祉協議会、成年後見制度の相談窓口へ早めに相談してください。
家族であることだけで、本人名義の預金を自由に引き出したり、契約を変更したりできるわけではありません。本人が意思を示せる段階で、利用している金融機関へ、代理人届、予約型の代理手続、見守りや支払いに使えるサービスがあるかを本人と一緒に確認します。対応方法は金融機関ごとに異なります。
日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い
本人が契約内容を理解できる場合
日常生活自立支援事業では、福祉サービスの利用手続き、日常的な金銭管理、書類などの預かりを支援します。窓口は都道府県・指定都市の社会福祉協議会や地域の社会福祉協議会です。利用には本人との契約が必要で、本人が事業の内容を理解し、利用の意思を確認できることが前提です。契約内容を理解することが難しい状態では利用できない場合があるため、社会福祉協議会と地域包括支援センターへ相談し、成年後見制度など別の支援も検討します。支援内容や料金には地域差があります。
判断能力が十分でなく、契約や財産管理が難しい場合
2026年8月8日現在の法定後見制度には、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」があります。家庭裁判所へ申立てを行い、裁判所が成年後見人等を選びます。家族を候補者として挙げても、必ず家族が選ばれるわけではありません。専門職が選任され、報酬が必要になる場合もあります。
2026年に改正法が成立したが、まだ施行前
成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」は2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。改正後は法定後見を「補助」の仕組みに一元化し、後見・保佐を廃止する予定です。成年後見制度部分の施行日は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令により定める日とされています。2026年8月8日現在、法務省の案内では具体的な施行日は示されておらず、まだ施行前です。今申し立てる場合は現行の後見・保佐・補助と、裁判所の現在の書式を確認してください。
改正法では、本人に必要な事項だけについて代理権や取消権を付けること、必要がなくなった場合に制度利用を終了できること、本人の意向を把握・尊重することなどが予定されています。施行日や経過措置が確定した後に、利用中の制度を継続するか、新制度へ移るかを個別に確認する必要があります。
申立てには、申立書、本人の戸籍謄本や住民票、診断書、財産や収支に関する資料などが必要です。申立て後は自由に取り下げられない場合があるため、制度の影響と費用を理解してから進めます。
まだ判断能力が十分にある場合
将来に備え、任意後見契約、財産管理等委任契約、遺言などを検討する方法があります。任意後見契約は、本人の判断能力が十分なうちに、将来任せる人と事務の範囲を公正証書で決めます。契約しただけで直ちに任意後見人の権限が始まるのではなく、判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。契約内容や本人の意思確認が重要なため、公証役場、司法書士、弁護士などの専門家へ相談してください。
詐欺や不要な契約から守る
- 郵便物、請求書、契約書を本人の同意を得て一緒に確認する
- 高額な振込や不審な引き出しがないか、本人と確認する
- 訪問販売や電話勧誘の記録を残す
- 消費者ホットライン188へ相談する
- 金融機関へ、本人を守るために利用できる対応があるか相談する
- 地域包括支援センターへ権利擁護の相談をする
家族が一方的にすべてを取り上げるのではなく、本人の尊厳と意思を守りながら、必要な範囲で安全対策を進めます。
一人暮らしの親が心配なとき
一人暮らしでは、食事、服薬、火の管理、詐欺、徘徊、孤立などを確認します。家族が遠方にいる場合でも、地域包括支援センターへ相談できます。自治体によっては、見守り、配食、緊急通報、認知症高齢者の事前登録、行方不明時の連絡網などがあります。
支援制度の名称、要件、費用は自治体ごとに異なります。「本人の住所地+地域包括支援センター」「本人の住所地+認知症相談」で確認してください。
今日やること|この順番で安全・受診・お金を守ってください
- 危険や急病がないか確認する
- 起きた変化を日付と具体例でメモする
- 親の住所を担当する地域包括支援センターへ相談する
- かかりつけ医またはもの忘れ外来へ受診方法を確認する
- 通帳、請求書、契約書の状況を本人と確認する
- 介護保険申請の必要性を相談する
- 金銭管理が難しい場合は、社会福祉協議会や成年後見の相談窓口につなぐ
よく検索される疑問
親が認知症かもしれない場合、どこに相談すればよいですか?
親の住所を担当する地域包括支援センターが最初の相談先になります。医療機関、介護保険、見守り、金銭管理などをまとめて相談できます。
認知症の親が病院を拒否するときはどうしますか?
無理に説得を続けず、地域包括支援センターへ状況を伝えてください。かかりつけ医への相談、訪問支援、認知症初期集中支援チームなど、地域で利用できる方法を検討します。
認知症の親の通帳を子どもが管理してもよいですか?
本人の意思と判断能力を確認する必要があります。本人の同意を得て支援する場合も、領収書と記録を残してください。本人が契約や財産管理を理解できない状態なら、家族だけで判断せず、日常生活自立支援事業や成年後見制度を相談します。
認知症の診断がないと介護保険は申請できませんか?
診断名だけでなく、日常生活でどの程度支援が必要かをもとに認定調査などが行われます。生活上の困りごとがあるなら、市区町村や地域包括支援センターへ申請を相談してください。
関連するガイドとサイト内メニュー
介護費用や医療費、家族の生活費にも困っている場合は、次の案内も確認してください。
主な公式情報
- 政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
- 厚生労働省「認知症とともに生きるためのガイドブック」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム・地域包括支援センター」
- 法務省「成年後見制度について」
- 法務省「任意後見制度について」
- 法務省「成年後見及び遺言の制度の見直し」
- 裁判所「後見ポータルサイト」
- 裁判所「後見開始」
- 全国社会福祉協議会「日常生活自立支援事業パンフレット」
制度や窓口の名称、利用条件、費用は地域や個別事情で異なります。この記事は一般的な案内であり、診断や個別の法律判断に代わるものではありません。公式情報確認日:2026年8月8日